年末に近ずくにつれて、「確定申告の準備をしなきゃ……」と思い始めると同時に、以下の疑問も抱くことでしょう。
- 損益通算を活用して税金を減らしたい
- 仮想通貨は損益通算できるの?
- そもそも損益通算とは?
- 副業・給料・FX(為替)と損益通算できるの?
これらを解説します。
なお仮想通貨の税金の計算方法は以下の記事をご覧ください。
【結論】雑所得内であれば仮想通貨は損益通算できる
仮想通貨全般の損益は、その他の雑所得の損益と通算ができます。
例えば…
- 仮想通貨の現物売買の損益
- 仮想通貨のレバレッジ取引の損益
- 仮想通貨を支払いに使用した時の損益
と
- アフィリエイト収入
- ライティングによる収入
- ネットオークションでの転売による収益
は合計して損益通算できます。
更に細分化してみましょう。
仮想通貨の損益通算とは
仮想通貨の損益通算とは、1年間で仮想通貨によって得た利益と損失を相殺することです。
なお主に以下の項目が当てはまります。
- 仮想通貨の売却
- 仮想通貨での支払い
- 仮想通貨の証拠金取引
- マイニング収益(採掘時点の日本円価格)
これらの取引内は仮想通貨の損益としてそれぞれを相殺できます。
例えば、仮想通貨現物売買では儲かったけど、仮想通貨FXでは損した……。
というときは、それぞれの利益と損失を相殺して課税額を減らせます。
【注意】狭義の損益通算とは?(国税庁の定め)
ここで1点注意したいのは、一般的に使用される「損益通算」と国税庁で定めるそれは、対象範囲が違うことです
→同所得内・他所得間で損益を相殺すること
→定められた所得区分間で損益を相殺すること
よく使用される損益通算は、同所得内や所得区分をまたいだ損益の相殺ことを指しいています。
しかし当局は以下の所得区分間で損益が相殺できることを「損益通算」と呼んでいます。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
参照:No.2250 損益通算
同じ単語を使用していますが、違い理解して使い分けるようにしましょう。
なおこの記事では、広義の損益通算を使用しています。
具体的にはどんな所得と損益通算できるのか?
では具体的にどんな所得同士であれば損益通算できるのでしょうか?
代表的な以下の収入例ごとに、可否を紹介します。
【比較対象】
- FX(外国為替証拠金取引)
- 仮想通貨
- 副業(雑所得)
- 給与(サラリー)
なおここでいうFXとは、FX(外国為替証拠金取引)以外にも…
- 先物オプション取引
- 先物取引
- 指数取引
- バイナリーオプション
が含まれますが、正しくは「先物取引に係る雑所得等」です。
参照:No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例/2 適用対象となる先物取引の差金等決済の範囲
またここでいう「副業」は具体的に、以下のケースを挙げましたが、
- アフィリエイト収入
- ライティングによる収入
- ネットオークションでの転売による収益
正しくは「雑所得」のことで、以下の所得に当てはまらない収入のことを指します。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 配当所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
参照:No.1500 雑所得
損益通算の精査基準
損益通算を検討するにあたり、3つ基準を設けました。
【精査基準】
- 課税制度(課税方式)
- 所得区分
- 通算期間
①課税制度(課税方式)とは、所得税を決める方式のことです。
所得区分によって課税制度は分類されます。
②所得区分とは、税制上分けられる区分のことで、それにより控除や課税制度などが異なります。
③通算期間とは、通算可能な対象期間のことで、①の課税制度ごとに1年もしくは3年と定められています。
次の項目からは、対象ごとにこの基準を当てはめます。
【1】課税制度(申告分離課税・総合課税)
課税制度は2種類あり、今回は以下のように分けられます。
【①申告分離課税】
- FX
【②総合課税】
- 仮想通貨
- 副業(雑所得)
- 給与(サラリー)
結論は、①申告分離課税の「先物取引に係る雑所得等」内では損益通算ができます。
しかし②総合課税内では一部の所得のみ相殺できず、それ以外の所得は合算して課税されます。
申告分離課税と総合課税の違い
①申告分離課税とは、確定申告のときに他の所得と合算せずに、独立して課税される制度のことです。
【特徴】
- 税率が一律:20% + 復興特別所得税
- 他の所得との損益通算ができない
- 「先物取引に係る雑所得等」内であれば損益通算できる
- 仮想通貨のFXや先物取引はこれに含まれず、相殺はできない
また「先物取引に係る雑所得等」の他には、以下の所得が申告分離課税の対象です。
- 山林所得
- 土地建物等の譲渡による譲渡所得
- 株式等の譲渡所得等
- 特定公社債等の利子等に係る利子所得
②総合課税制度とは、それぞれの所得区分同士の所得を合計して課税額を計算する制度です。
【特徴】
- 税率は所得額によって累進的に増加する
- 所得税自体の控除がある
- 通算は上記の 【注意】狭義の損益通算とは?(国税庁の定め)に記載した4つの所得のみ可能
また以下の所得が総合分離課税の対象です。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
【2】所得区分と通算(雑所得・給与所得)
次に所得区分は以下のように分けられます。
【雑所得】
- FX
- 仮想通貨
- 副業(雑所得)
【給与所得】
- 給与(サラリー)
結論は、仮想通貨と副業(雑所得)同士であれば、損益通算できます。
しかしFXは雑所得ですが、申告分離課税のため上記2つと損益通算ができません。
また給与所得は 狭義の意味の損益通算ではないため損益通算できず、総合課税内で合算された利益(所得)が課税されます。
【3】通算期間
結論、申告分離課税と総合課税は、損益通算できる期間は異なります。
3年(申告分離課税)
- FX
なお申告分離課税では、損益通算ではなく繰越控除といいます。
例えば1年目の赤字を2年目の利益と相殺して、2年目の課税額を減らせます。
しかし仮想通貨のFXや先物取引は申告分離課税ではないので、1年間の損益で通算します。
参照:No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例/4 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
1年(総合課税)
- 仮想通貨
- 副業(雑所得)
- 給与(サラリー)
【まとめ】仮想通貨の損益通算
最後に大事なポイントをおさらいします。
- 損益通算には、一般的に使われる広義と、金融庁が定める狭義がある
- 仮想通貨と副業は1年を対象に損益通算できる
- 仮想通貨・副業・給料は、総合課税によって確定申告時に合算されるが、損益通算はできない
- FX(先物取引に係る雑所得等)は「雑所得」だが、申告分離課税によりその他の所得と通算できない
- しかし内部の損益は3年間通算できる
これで図『仮想通貨の損益通算(+⇆ー)』を更に理解できるようになることでしょう。
仮想通貨の税金の仕組みは、一度覚えれば毎年役に立ちます。
大変ですが確定申告の前に覚えておきましょう。
「いくらから仮想通貨に税金がかかるの?」と思った方は以下の記事をご覧ください。