昨年頃から、仮想通貨ニュースで「ビットコインETF」というフレーズをよく目にするようになりました。
しかし「そもそもETFとは?」そして「ビットコインETFとは?」と疑問に思う人が、たくさんいることでしょう。
そこで今回はビットコインETFについて、以下の項目について解説します。
- ビットコインETFとは
- メリット・デメリット
- ビットコインETFがまだ存在しない理由
- これまでの申請経緯(12件)
- ビットコインETFがもたらす影響
ビットコインETF(上場投資信託)とは
ビットコインETFとは、証券取引所に上場したビットコインの投資信託です。つまり有価証券として証券株や債券と同じ分類になります。
ちなみにETFは以下の略です。
- Exchanges(取引所で)
- Trade(交換できる)
- Fund(投資信託)
投資信託は証券取引所に上場(ETF化)することで、より資金を集めやすくなるなどのメリットがあります。しかし、その国が設置した政府機関に承認されなければ上場はできません。
なお日本では、証券取引等監視委員会(SESC)が、アメリカでは証券取引委員会(SEC)が審査をしています。
ちなみにアメリカがETFの上場に力を入れているのは、手数料が安くリアルタイムで取引ができることから、新たな投資家層や機関投資家がETFを購入するためと思われます。
ETFや投資信託について詳しく知りたい人は以下記事をご覧ください(現在準備中)。
- 【一旦用語まとめ】
- ETF
上場投資信託 - 投資信託
ファンドに資金を預けて、その運用損益が投資家に帰属する金融商品 - ファンド
投資信託で投資から集めた資金を運用する機関 - 運用会社
ファンドへ運用の指図をする機関 - ビットコイン投資信託信託
ビットコインやビットコインETFに投資する投資信託 - ビットコインETF
証券取引所に上場したビットコイン投資信託 - 証券取引所
株や債券をより円滑に取引するために設立された取引所
ビットコインETFにはどんな種類があるの?
ETFは分散的に投資をしているケースが多いため、1つの取引所の価格変動に左右されにくい特徴があります。だからといって、値動きが少ない安定した金融商品とは限りません。
実際に申請されたビットコインETFには、以下のような種類がありました。
- 現物価格よりも1倍~2倍の値動きが発生するETF
- ビットコイン先物に連動
- 現物と先物の両方に投資したETF
- ビットコインの売りを基準としたETF(ファンドは売りの戦略)
- ビットコインとブロックチェーン関連株を組合せたETF
- ビットコインとイーサリアムに分散投資したETF
例えば1番に関しては「アクティブ型」と言われ2倍の値動きをするので、ハイリスク・ハイリターンなETFです。また4番は価格が現物仮想通貨と逆に動くため、通常のETFなどと同時に購入することでリスク回避先として利用できます。
その他にも多くの種類があり、投資スタイルの幅が広がることでしょう。
ビットコインETFのメリット・デメリット
ここまででビットコインETFのイメージがなんとなく掴めたと思います。
ではビットコインETFは一般投資家にどのような、メリット・デメリットをもたらすのでしょうか?
メリット
- 分散投資をしてリスク分散できる
- 申告分離課税の対象になり、税率が一律20%で抑えられるかもしれない
- ビットコインを保有しなくて良いので、ゴックスリスク(仮想通貨取引所のハッキング)が減る
デメリット
- 信託報酬(ファンドへの運用手数料)毎年が発生する
- 仮想通貨の送金に利用できない、あくまで証券であるため
- 各ETFの特性(ブル、ベア、アクティブ等)を理解する必要がある
ここまでを理解し、「ビットコインETFを買ってみたい」と思った方も多いことでしょう。
しかしビットコインETFを取り扱っている証券取引所は世界中でまだ1件もありません。
次の項目ではその理由を解説します。
ビットコインETFがまだない理由
2019年5月現在、日米共にビットコインETFを購入できる証券取引所はありません。
その理由は、日本ではまだ上場申請がされていなく、またアメリカでは20件以上の申請がされているにも関わらず、全てSECにより非承認とされているためです。
SEC(米証券取引委員会)とは、株式や債券などの証券取引を監督・規制する政府機関で、取引所ETFを上場させるには、当局の審査が必要です。なお商品先物に関しては別の政府機関であるCFTC(米商品先物委員会)が管轄しています。
2018年からビットコインETFの申請が始まりこれまでに12件がSECに申請されています。しかしいずれも非承認や取下げ、延期などの回答が続いており、悲観的な現状です。
これまでのSECへの申請経緯(期限、取り下げ、延期)
実際にこれまで申請の経緯をご覧ください。
申請日 |
申請企業 |
上場先 |
ステータス |
SEC決済日 |
*最終判断期間 |
2016年 6月30日 |
ウィンクルボス兄弟 |
Bats BZX |
非承認 |
2017/3/10 |
ー |
2017年 1月23日 |
グレイスケール・インベストメント |
|
取り下げ |
ー |
2017/9/27 |
2017年 4月25日 |
【再審査】ウィンクルボス兄弟 |
Bats BZX |
非承認 |
2018/7/26 |
ー |
2017年 8月23日 |
レックス |
CBOE |
ルール変更 |
ー |
ー |
2017年 12月28日 |
【変更】レックス |
CBOE |
取り下げ |
ー |
ー |
2017年 12月17日 |
プロシェアーズ |
|
非承認 |
2018/8/22 |
ー |
2018年 1月4日 |
ディクレシオン |
CBOE |
非承認 |
2018/8/22 |
ー |
2018年 1月5日 |
グラナイトシェアーズ |
NYSE Arca |
非承認 |
2018/8/22 |
ー |
2018年 6月20日 |
*ヴァンエック ソリッドX |
CBOE |
取り下げ |
ー |
2019/1/23 |
2018年 7月24日 |
ビットワイズ |
NYSE Arca |
ルール変更 |
ー |
ー |
2019年 1月10日 |
【再申請】ビットワイズ |
NYSE Arca |
申請中 |
ー |
2019年10月後半 |
2019年 1月30日 |
【再申請】ヴァンエック ソリッドX |
CBOE |
申請中 |
5/20 |
2019年10月後半 |
※更新日:2019年5月22日
そして、この申請の全てが却下されています。
SECのビットコインETF非承認の理由
ではどうしてSECは非承認するのでしょうか?
その理由は、以下の5つの審査基準が満たされていないためです。
- 公正な価格評価
- 流動性の担保
- カストディ機能
- 円滑なアービトラージ
- 価格操作等のリスク
まず①公正な価格評価とは、「ETFの売買価格は信頼ができるか?」という審査基準です。
しかし何が公正であるかの判断基準は、明確に定められていません。ただ仮にとあるビットコインETF が3つの取引所に分散投資をしていたとして、その取引所ごとの価格に大きな乖離があったり、さらに取引所間で故意的な送金をしていた場合には、公正とは言えないでしょう。
②流動性の担保とは、「ビットコインの取引量と取引頻度が潤沢に行われているのか」という審査基準です。
流動性が低いとボラティリティ(価格変動)が高くなり、時には取引所間で大きな価格差が発生します。そのような投資先を元に表示されるETF価格は、公正な価格評価とは言えないでしょう。またファンドが顧客の資金を適切に投資できない可能性もあります。
③カストディ(保管)機能の確保とは、「ファンド(信託銀行等)が顧客から預かった資産を安全に安全に保管できるか」という審査基準です。
④アービトラージが円滑に可能か、「ETFがアービトラージされていて、それにより投資家が適切な価格で、常に売買できる環境であるか」という審査基準です。
ETFでは指定参加者と呼ばれる2社以上の証券会社が、絶えずETFを売買して流動性を担保しています。もしアービトラージされないと、投資家によるETFの注文遅延が発生したり(約定しない)、注文方法によっては希望価格とかけ離れた価格で約定する可能性があります。
最後に⑤価格操作等のリスクとは、「ビットコインの価格が操作され、結果的に投資家に損害が発生してしまわないか」といった審査基準です。
ビットコインは相場規模が他の金融商品と比べてまだまだ小さいことや、クジラと呼ばれる一部の大口保有者の大量売買により、結果的に相場操縦と捉えられるような事象が起きます。
以上がビットコインETFの審査基準です。またこれらは、SECの投資管理部門のディレクターであるDalia Blass氏が各取引所に申請の取り下げをした際の文章から明らかになりました。
ビットコインETFが上場した際の影響
実際にビットコインETFが上場したら、どのような影響が出るのでしょうか?
結論は以下の通りです。
一般投 資家への影響
- 証券とみなされることで進行分離課税の対象となれば、税金が20%で固定される
- 証券会社からビットコインETFを購入できるようになる可能性がある
- ビットコイン市場の流動性も高まることで、注文が通りやすくなる
- 板が厚くなることで、価格変動幅が狭くなる(ボラティリティが低くなる)
- 信用取引ができる(現物取引ではない)※先物は…差金決済
- 多様なビットコインETFを組み合わせることでリスクヘッジを図れる
機関投資家への影響
- ビットコインを保有せずに仮想通貨の取引ができるため、機関投資家が市場に参入しやすくなる。
ビットコインの価格への影響
- 機関投資家による大口のマネーが投入され、価格上昇する可能性がある
- 市場からの信頼度が高まり、機関投資家が参入し価格上昇する可能性がある
なおETFには、一般投資家用と機関投資用で種類が別れています。
その中でも特に一般投資家への影響は大きいと言えるでしょう。
日本でもビットコインETFを購入できるようになるの?
現在日本ではビットコインETFは申請されていません。そのため日本のファンドが運用するETFを購入するのは、上場を待つことになります。
しかしマネックス証券やSBI証券などが海外のETFを取扱ってしているため、もしそれらの機関が取り扱えばビットコインETFも取扱えば日本でもリアルタイムで購入できるようになります。ただし、販売手数料が比較的高くなってしまうことや、外貨建てで売買するため為替変動も考慮する必要があります。また中には、アクティブ運用ETFと呼ばれる価格変動の激しいETFも多く含まれているため、事前にそれらの確認が必要となるなどの注意点もあります。
まとめ、ビットコインETFはいつ上場できるの?
世界中でビットコインETFの上場が待ち望まれています。
それにも関わらず上場を果たせないのは、投資家へのリスクが高すぎると判断されているからでしょう。
7日に大手取引所のバイナンスがハッキング被害に合いサービスが一時停止する事態となりました。それに伴い流動性(マーケットマーカー)が滞り、連鎖的に被害を被った中小規模の取引所もあることでしょう。
これらの現状を踏まえると、上記のSEC承認基準が満たされるのは、まだ数年先のように思わえます。